働きがいのあるのはどの戦国大名か?~企業として見た豊臣家~

働きがいのあるのはどの戦国大名か?~企業として見た豊臣家~

戦国武将の生き様に、自分の人生を重ねると、勇気をもらえることがある。その筆頭が、豊臣秀吉である。

就職先としての「豊臣家」はどうなの?

秀吉の幼少期については、実はよく分かっていない。「秀吉」という名前がはっきりと文献に記されるのは、秀吉が28歳になってからのことで、それ以前のことは、はっきりとしていないのである。

織田軍の鉄砲足軽でありながら、戦場で負傷したため、百姓をしていたともいわれている。だが、鉄砲伝来が1543年(天文12年)だったことを踏まえれば、どうも計算が合わない。

ただの足軽だったのかもしれないし、17世紀初頭に成立した小瀬甫庵の『太閤記』や、ルイス・フロイスの『日本史』などでは、秀吉は貧しい百姓の子だったとしてる。

そんな謎多きところも「秀吉伝説」が物語られやすい理由なのかもしれない。いずれにしても、秀吉が日本史史上においても、異例の大出世を果たしたことに変わりはない。

そして、その立身出世のストーリーに、後世の人々は勇気づけられてきた。もし、戦国大名が企業だったら、豊臣家に就職したいという若者も少なくないはずだ。

だが、豊臣家の場合、入社後のギャップに苦しむ可能性も否定できない。秀吉は、イメージ以上に、複雑なメンタリティの持ち主だからだ。

元幹部社員と親族をうまく排除


織田家は企業として例えるならば、機動力の高いベンチャー企業そのものである。

であれば、豊臣秀吉は、そのベンチャー企業が倒産したときに、すばやく後継者の椅子に座ってしまったといえる。

その軋轢があちこちで生じるのは、いうまでもない。まずは織田家の重臣たちである。柴田勝家や滝川一益などの有力者は、さしずめ、ベンチャー企業である織田家の幹部社員だ。秀吉がいきなりトップに座るのは当然、面白くない。

しかし、秀吉には主君の仇をすぐさま倒すという、とてつもない大きな功績を挙げている。秀吉はその立場をフル活用して、発言力を強化。古参の幹部社員を追い落としていく。

次に、問題となるのが、織田家の息子たちなどである。いわゆるファミリー企業の親族たちだ。さすがにこれを撃つのには、大義名分がいる。秀吉は知恵を絞り、自分に何とか歯向かわせることで、親族を排除する理由を作り出した。

自分がこう出れば、相手はこう来るはず――。

秀吉ならば、現代のビジネスシーンのおいても、巧みな心理テクニックを用いたであろう。そして、裏の裏をかく経営者のもとで働くということは、決して楽ではない。根幹には常に、猜疑心を持っているからである。

効率重視で会社を成長させた秀吉社長


いわば織田家というベンチャー企業をのっとって、豊臣家の看板にかけかえた秀吉。有力大名が家臣になれば、前の苗字である「羽柴」を与えることで、求心力を高めていく。

前田利家もその一人で、1586年(天正14年)に左近衛権少将に任じると、「羽柴」の苗字と「筑前守」の受領名を与えて、利家に「羽柴筑前守」と名乗らせている。企業でいうところのチェーン展開のようなものである。

そして、いつも極めて合理的な戦法をとるのが、秀吉会社の特徴だ。毛利氏・長宗我部氏・島津氏といった多くの大名を武力で打ち倒すことなく、あえて助命している。

短期間で天下統一するために、どんどん他の勢力を吸収していったのだ。

入社後のギャップが怖い豊臣家

いけいけどんどんの豊臣家。成長企業に身を置けば、刺激的な会社員ライフが送れるだろう。

だが、たたき上げの秀吉だからこその大変さもある。例えば、刀狩りだ。秀吉は農民だからといって油断はしない。自分が成り上がりだから当然である。

近親憎悪という言葉があるが、低い身分から成り上がっても、弱い立場の人々に理解があるとは限らない。むしろ逆に作用してしまうことがある。自由に出世できる環境だと思ったら大間違いだということだ。

また、効率重視で合理的な秀吉社長は、特に残忍さを顔を出す。豊臣家というベンチャー企業の勢いと、社長である秀吉の気さくな振る舞いに感動して入社してしまったら、制限だらけの窮屈な社風で驚いてしまうかもしれない。

『企業として見た戦国大名』では、領地経営の観点から、戦国大名たちを現代のビジネスのトップリーダーとして捉えなおした。詳しくは、本書をぜひご一読いただきたい。

戦乱の世において、働きやすいのはどこだろうか。上司、部下の気持ちの双方から、思いを馳せてみてほしい、

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【『企業として見た戦国大名』目次】
織田家 実力主義でトップが恐いベンチャー企業
豊臣家 企業買収で急成長した新興企業
徳川家 人材を生かして組織力を強化したホワイト企業
武田家 アピール上手だけど内情は危ない老舗企業
上杉家 努力や苦労が報われないブラック企業
毛利家 一大グループを作った理想的なホワイト企業
今川家 ベンチャーに追い込まれた名門企業
北条家 従業員ファーストの大手企業
真田家 すき間産業で生き抜いた中小企業
大友家 地方で急成長したグローバル企業
伊達家 したたかな社長率いる体育会系企業
朝倉家 カリスマ社長とベテラン社員が支えた老舗企業
長宗我部家 中央進出をもくろんだ上昇志向の地方企業

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